「お呼びですか？」 　突然、すきま壁がむくむくと盛りあがって、中から私好み 　の長身の美青年が出てきたのです。青年は、屈託の 　ない笑顔を浮かべると、私の方に近づいてきました。 　「マカベです。『すきま壁』から出てきた、マ・カ・ベです。 　さて、奥さん何をしましょうか。一緒にビデオでも観ま 　しょうか？それとも、二人でトランプでもやりましょうか？」 　　マカベ君は、本当に好青年でした。私が淋しいとき、 　そっと「すきま壁」から出てきて、私の話をじっくりと 　聞いてくれます。落ちこんでいるときは、とろけるように 　優しい言葉で励ましてくれます。退屈しているときには、 　たわいないジョークを並べて笑わせてくれます。ソファに 　並んで同じビデオを観ては、一緒に泣いたり笑ったりして 　くれます。まるで私の心の中が読めるかのように優しい 　のです。