「ブラボー！」 　　そのとき、客席から大きな声がして、割れるような 　拍手と歓声が聴こえてきました。目を開けると、客席 　には、どしゃぶりのような雨が降っていました。 　酔っ払った客達が、うれしそうにぴょんぴょんと跳び 　はねています。わたしを迎えにきたぎょろ目の男が、 　一番前の席でにやりと微笑みました。 　「おめでとうございます！」 　司会者が、舞台袖から登場してきました。 　「あなたが、今年の雨の女王です。これが、優勝の 　景品です。」 　わたしは、一本の虹色の傘を渡されました。 　「これは、ただの傘ではありませんよ。あなたが 　この傘を開くと、どんな大雨が降っていても、ぴたりと 　止むでしょう。そして、虹を見ることができるでしょう。 　あなたが、さみしいとき、心が沈んだとき、ぜひお使い 　ください。」 　司会者は、こう言ってから、小さな声でささやきました。 　「でも、あんまりしょっちゅう使わないでくださいね。 　こうして、雨が大好きな連中もいますから・・・。」 　司会者は、客席で、子供のようにはしゃいでいる人たち 　を指差しました。