次の日は、また雨になりました。わたしは、虹色の傘を 　持って、虹の橋公園にでかけました。でも、どんなに歩き 　回っても、昨夜の「レインステージ・カフェ」を見つけること 　はできませんでした。 　　ふと、菖蒲池を見渡せる小さな「虹の橋」に立ってみた 　とき、わたしは昨日のステージの感覚を思い出しました。 　たしかに、この位置だった気がします。橋の真ん中に 　立って見下ろすと、艶やかに咲き揃った菖蒲の花が雨に 　しっとりと濡れていました。 　　菖蒲池を囲むように、ピンクやブルーに色づき始めた 　紫陽花が、優しくほほえんでいます。どこからか、ウシガエル 　の低い声が、モウー、モウーっと響いてきて、その瞬間、 　橋の下で、二つのギョロ目が、わたしを見上げたような気が 　しました。

虹の傘の効き目を試そうと、ここまでやってきたのですが、 　さしてみるのはやめにしました。この傘を使うのは、「大切な 　人とのとっておきの時間」がくるまで、大事にとっておこうと 　思います。 　　６月の雨の中で、わたしも、一輪の花になったように、いつ 　までも濡れながら佇んでいました。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＴＨＥ　ＥＮＤ

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