わたしは、思わず目をつむると、レインスティックを両手で頭の上まで 　持ち上げ、ゆっくりと振り始めました。 　　シャラシャシャラ、ザーッ、パチパチ・・・。懐かしい雨の音がします。 　わたしが生まれてからずっと聴いてきた、さまざまな雨の音たち・・・。 　なんていろいろな表情があるんでしょう。わたしは、目を閉じたまま、 　何度も何度もレインスティックを鳴らし続けました。 　　頭の中に、いろいろな光景が浮かんできました。どれも、雨の日の 　思い出です。小学生のとき、お寺の前で、まだ目の開かない子犬を 　拾って、家まで抱いて帰ったこと・・・。セーラー服で、びしょぬれに 　なって帰る途中、知らない若い男性が、上着を脱いで「これ、使って。」 　と差し出してくれたこと・・・。スクールバスを降り、大好きだった岩本君 　に、照れながら傘を差し出し、校舎まで相合傘で走ったこと・・・。 　 レインスティックの音色に導かれるように、雨の日の思い出が次々と 　わたしの中を駆け巡っていきました。