次にステージにあがったのは、貫禄のある 　中年の女性でした。鬼瓦のような顔をしてい 　ましたが、低く、大地を揺るがすような太い 　声で、雨の歌を歌いました。オペラのアリア 　のようでした。大きなお腹を揺すりながら、 　時おりレインスティックを持ち上げ、歌に合わ 　せて振りました。アリアがラストに近づき、 　女性がレインスティックを両手で高く掲げた 　とき、客席にざぁざぁと強い雨が降り出し 　ました。 　　客たちは、飛び上がって喜びました。大きな 　拍手がいつまでも続きます。中には、雨を 　グラスに受けて、飲み干している客もいます。 　「さぁ、いよいよあなたの番ですよ。」 　そのとき、あの背の低い男が、つぶれた声で 　言いました。