わたしは、意を決して、ご近所のオバタリ 　アン達のドン的存在、マキノ夫人を訪ね 　ました。 　「オバタリアンになりたいですって？」 　マキノ夫人は、案の上、大きなお腹をぶる 　ぶる震わせながら、笑い転げました。 　そして、わたしをジロジロとながめまわす 　と、ちょっぴり意地悪な口調で言いました。 　「まっ、ダンナ様にすっかり甘やかされて 　いる、あなたのような“お嬢さん奥様”には、 　一生かかっても無理でしょうね。」 　でも、さすが、ドンと慕われるマキノ夫人です。 　しょげかえっているわたしに、熱いこぶ茶を 　すすめると、台所から水をはった小さなお椀 　と、菜ばしを持って現れました。 　「大丈夫。あたしにまかせて。三年前、お隣り 　のキムラさんにも、やってあげたのよ。さあ、 　口を開けて。麻酔も効いてくるころよ。」 　わたしは、先ほどのほろ苦いこぶ茶の味を 　思い出しながら、言われるままに、あーんと 　大きく口を開けました。