　「沖田ソウジ？誰がそんな名前つけたの？」
　「自分でつけたんだよ。名前をつけてもらえ
　ない電気製品は、自分で勝手に好きな名前
　を名乗っていいことになっているんだ。」
　「へーえ。」
　「商品名をそのまま名乗っている魂もいるよ。
　ほら、洗濯機の“静御前”さんとかね。でも、
　普通はあまり使わないんじゃないかな。
　古い機種だって、すぐにわかっちゃうもの。」
　「古い機種じゃいけないの？」
　「僕たちの世界ではね、新人ほどいばって
　いるんだ。新しい機能をひけらかしてさ。
　よかったよ、僕は。新製品のうちに、買って
　もらえて。どんどん安い値段をつけられて、
　店先に並んでいるのは、みじめだからなぁ。」
　「あなた達も、いろいろ大変なのねぇ。」
　「そうそう、和室のテレビの電像じいさんだけど、
　そろそろ買い替えてあげてくれないかなぁ。もう
　引退したいんだって。眠くてたまらないのに、
　ラップの芯で叩かれて起こされるのは、勘弁して
　ほしいってさ。」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　