-2-
「それで、その林檎は一体どのくらい大きいのですか？」
「そうですなぁ、例えて言うと、中をくり抜けば部屋が一つすっぽり入るくらいの
大きさです。」
「えっ！部屋が一つですって！」
その時、吟遊詩人が思い浮かべていたのは、３畳一間の自分のボロアパート
の部屋でしたが、お姫さまが思い浮かべていたのは、５０畳の自分の寝室でした。
ジンジャー姫は、頭の中で素早く計算しました。そして、ニッコリ笑うと吟遊詩人に
言いました。
「すぐに出発しましょう。それだけ大きな林檎があれば、アップル国の国民一年分
の食事が作れるわ」
すると、横で話を聞いていた料理長のプルが慌てて言いました。
「お姫さま、ちょっとお待ち下さい。そうなると、この国の果樹園で取れた林檎は
どうすれば良いのでしょう？」
「そうねぇ…」と、ジンジャー姫は腕を組んで考え込みました。
「そうだわ！名案があります。メルヘン国に輸出して、アンパン一年分と交換して
もらいましょう」
「しかし、交換してくれるでしょうか？」
「私から、セナヤ国王に手紙を書いてお願いしてみます。セナヤ国王はとても優しい
王様なので、きっとオマケに、カレーパンとショクパンも付けてくれると思いますよ」
すると、料理長プルはものすごく嬉しそうな顔をしました。
「それはいいですなぁ、林檎以外の物を食べるのは久しぶりです」
「では、セナヤ国王に手紙を書いたら、すぐに出発するので、何かお弁当を用意して
下さい」
「はい、ただ今すぐに！」
「リュックサックいっぱいの林檎飴も忘れずにね！」
「はいはい。１０本の水筒に林檎ジュースを入れ、林檎おにぎりと、林檎サンドイッチ
をたっぷりお作りいたしましょう」
プルは太ったお腹をプルプル震わせながら、小走りに調理場の方へと走ってゆき
ました。
　
　　　（この２の部分は、以前聖子さんが書いてくださったものです。）