ナヤミ列車 　　　　　　　　　　 　 　　シミが気になり始めたら 　　小ジワが気にならなくなった 　　たるみが気になり始めたら 　　シミも気にならなくなった 　　そんなふうに 　　わたしの心の 　　両隣の席には 　　かわるがわる 　　「ナヤミ」が座っていて 　　決して空くことがない 　　それでも 　　五十女の人生列車には 　　「アキラメ」だの 　　「ゴマカシ」だの 　　「ダキョウ」だのが 　　居座っていて 　　みんなでやいのやいのと 　　騒ぎ立てるので 　　なんとか楽しく 　　やっていけそうなのだ 　　一癖も二癖もある連中が 　　「今度はどんな奴が乗ってきたんだ？」 　　と一斉に取り囲むので 　　新顔の「ナヤミ」も 　　早々と降りていくらしい 　　わたしの人生が 　　終点にたどり着いたとき 　　列車に残っているのは 　　いったいどんな連中なのか 　　両隣の席には 　　いったい何が座っているのか 　　それを見届けるのが 　　今から楽しみなのだ 　　　　　　（２０１３年『詩とメルヘン』第２３号掲載）