十年

          

  「人間はね

  十年つきあってみないと

  わからない

  だから みつこさんのことも

  十年見させてもらうよ。」

  こんなふうに言われたとき

  新米の嫁だったわたしは

  震え上がってしまいました

  息子の選んだ嫁なのに

  十年も経たないと

  信じてもらえないなんて

  なんて意地悪な

  とも思いました

  でもね、おとうさん

  歳を重ねるにつれ

  わかってきました

  どんなに大好きな人も

  尊敬できると思った人も

  三年、五年とつきあっていくと

  意外な面が見えてきます

  困った性分や風変わりな癖など

  見えてきてはじめて

  その人を知ったことになるのですね

  それでも十年経って

  その人が近くにいてくれるなら

  きっとわたしの人生にとって

  大切な人です


       (2007年『詩とファンタジー』創刊号掲載)