だから、私は、タケシのことをこう呼ぶのだ。 　聖徳タケシ。 　もちろん、タケシは聖徳太子なんかじゃないから、一緒にいる私は、 　いつだってイライラさせられるのだ。 　 　私がもし、タケシの恋人だったら、絶対に許せない。 　「親友として忠告しておくけど、、、。」 　私は、受話器に向かって言った。 　「タケシ、また彼女にフラれるわよ。女はね、いつだって、自分の方だけを、 　ちゃんと見ていてほしいんだから、、、。」 　「、、、。ミーに心配してもらわなくても大丈夫」 　フン！全く頭にくるやつだ。 　くやしいけれど、タケシはよくモテる。大学のパソコン同好会では、下級生に 　人気がある。タケシは女性にやさしいのだ。私が落ちこんでいるとき、いつも 　トロけるような優しい言葉をかけて、なぐさめてくれる。 　でも、そこで感激してはいけない！ 　タケシは、同時に十人の女の子に優しい言葉をかけ、誕生日には花束を贈って 　いるのだ。 　「タケシ、あんたは、一人しかいないのよ。」 　「、、、。大丈夫。ぼくは、自分の精神をいくつにも分散できるから、、、。」 　　 　「精神を分けられても、タケシの体は、ひとつだけよ。」 　「、、、。なるほど。」 　タケシは、めずらしく感心して言った。