「漂白はやめてほしいわ。痛いんだもの。」 　レースのフルーツ皿が、震えながら言い 　ました。 　「とにかく、われわれをいっしょくたに詰め 　込んで、一度に洗うなどという野蛮な行為は 　避けていただきたい。」 　大皿紳士が、重々しい声で言いました。 　「そうよ。アウシュビッツのガス室じゃある 　まいし。」 　「おお、怖い・・・。」 　花柄婦人にもたれて、またフルーツ皿が 　泣き出します。 　「何も、そんな大げさな・・・。」 　わたしは、少しあわてて言いました。 　「わかったわ。そんなに嫌なら、食器洗い機 　は買わないわ。でもね、こっちだって大変 　なのよ。毎晩、毎晩、山のようなお皿洗い 　・・・。腰だって痛くなるし、手だって荒れる 　のよ。少しは、こっちの苦労もわかってもらわ 　なくちゃね。」