次の日は雨が止んで、すっきりとした月夜になり 　ました。 　　わたしは、窓から月を眺めながら、手紙のことを 　思い出しました。 　「それにしても、虹の橋公園にカフェなんてあった 　かしら？」 　とわたしがつぶやいたとき、窓の下から、つぶれた 　ような声が言いました。 　「お迎えにあがりました。お急ぎください。」 　窓の下を見ると、背の低い、ずんぐりとした男が、 　ぎょろりとした大きな目玉で、わたしを見上げて 　いました。 　「早く！もうじき、あなたの出番です。あっ、レイン 　スティックを忘れずにお持ちください！」 　　男にせかされて、わたしは思わずサンダルをひっ 　かけて、外に出ました。わけもわからずに、男の 　後を追いかけます。 　「ちょっと待って！出番ってなあに？何でそんなに 　急ぐの？」 　男は、見かけによらず、とっても足が速いのです。 　フロックコートの裾をなびかせ、跳ぶように進んで 　いきます。 　　わたしも、必死に追いかけました。