「はい。世の中には、『星のぼうや』として生まれてきた人達が 　たくさんいます。その人達は、決して大人になることがない。 　外見は年をとっても、中身は子供のままなんです。」 　「わたしのような年寄りが『星のぼうや』とは、何ともおかしな話 　ですが、たしかに君の言うとおり。わたしは昔から、周りの者に 　『いつまでも子供っぽい』と笑われてきました。夢ばかり追いか 　けては、仕事を転々とし、好きな女性とも結婚できず、未だに 　独り身なのです。いや、はずかしい話だが。」 　彦造さんは、昔を懐かしむように言いました。 　「それでも、彦造さんの存在は、きっと周りの人達を幸せにして 　くれたはずです。彦造さんの、子供のようにまっすぐな瞳を見つ 　めたり、彦造さんの夢の話を聞きながら、みんなとても心がなご 　んだはずです。」 　「そうじゃろうか・・・。」 　「きっと、そうです。それが『星のぼうや』の使命なんですから。」 　「わたしのような人間が、それほど人の役に立ってきたとは思え 　ませんが、もしそうだったら、うれしいですな。」 　彦造さんは、はずかしそうに笑いました。